今日は2回目のエキストラの仕事だ。
起床は早かったです。普通にご飯を済ませとりあえず着替えることに。
前回同様今回も服装はスーツ。そして恐い役ということだ。
まあ総会屋がいいところだろうと思い髪をセットする。
いつも使ってるジェルで普段は逆立てるところを今回はオールバックにする。
俺「・・・・・・恐ぇ」
一瞬逃げたくなってしまうが向かい合っているのは俺だ。
すでに今日1日の脱出不可能を保証されてしまったようだ。
まあ良く考えるとするならば外資系企業に勤めているエリートサラリーマンだ。
出発。
今日は日曜日。そしてここは観光地。
案の定オジサンオバさん、そして憎きカップル共が駅から溢れかえってくる。
そう、ここは観光地。
良く見ると外資系、悪く見ると総会屋の俺がその人ごみを割って入り駅に向かう。
刺さる・・・・・・
痛いほど刺さるぜ
汚物を避けるかの様なその視線が!!
今日の仕事が終わったらさっさと帰ってしまおうと心に誓う外資系企業の俺。
コンビニにも寄らず電車に乗り込む。
午後1時半少し前、高輪台という新橋から都営浅草線で10分ほどの駅に到着。
地上に上がると誰もいない。
責任者を探しまくるがどうにも見つからないのでエキストラらしい人に声をかけることに。
そして駅前にたむろしてるエキストラを適当に捕まえて話していると2時に。
責任者は現れず。
そしてしばらくして他の人が階段に向かって会釈し始めたので
ようやくマネージャー到着だと思いマネージャーの顔を見ぬまま俺も会釈。
顔を上げるとそこにはどこかで見たような顔だ。
俺「この人、芸優の人だったのか」
以前の収録の時に俺達に演技指導をした人だ。
普通は助監督がやるものだと聞いていた俺はてっきりその人かと思っていたのだ。
そして助監督ではなかったマネージャーの口から第一声。
マネージャー「3時にまたここに集合してください」
「はーい」と言うエキストラたち。
しかし心の中はそこまで素直ではなかっただろう。
だが逆らえばせっかくつかんだ仕事が今後無くなってしまう可能性があるので
皆おとなしく従うことにする。
さあ今度は時間をつぶす場所を探さなければならなくなった。
高輪台に一度来た事のある人ならわかるだろうが
この町は恐ろしいほど何も無い。コンビニが1件あるくらいだ。
陽射しは容赦無く俺達エキストラを照らしつづけている。
このままでは皆収録が始まる前には顔が赤くなってしまう!
そんな心配をしながらオロオロしていると駅前で工事をしている人が
休める公園の場所を教えてくれたのでそこへ行く事にした。
まだ都会にもこんな愛想の良い人がいるもんだなと感心。
公園。
適度な広さ。適度な緑に囲まれた環境の良い公園だ。
そこへ俺含め4人+1人を加えたメンバーが到着。
さわやかな公園。
小さい子供が遊んでいる光景はまさにテレビでよく見るような感じで清々しい。
しかしその公園の4人がけのベンチを
窮屈そうに占領する大柄な大人4人!
まさにそこはオアシスに突如現れたブラックホール。
奥様方の視線が痛い。
俺はここで他の3人と1時間ずっと喋ってました。
皆俺より年上で知識豊富です。年齢は20代後半から50歳。
聞くところによれば皆けっこう他の会社も掛け持ちしていたりしてるようで
芸優は特に仕事を取るのが面倒くさいとかいろいろ聞きました。
そんなこんなで1時間経ったので元の場所に戻り移動することに。
徒歩30秒。スタジオに着く。
こんな近いところにあったのかと開いた口が塞がらない状態に。
あとはずっと公園の続きで「役柄何だろう」とかそんなことを話して役者の到着を待ちました。
番組内容から考えると今日来る芸能人は主役の長瀬智也だろう。
そのせいかスタジオの前には追っかけらしい女の子が4人ほどいたのだ。
一体どこでそんな情報を仕入れたんだろう?
途中スタジオ内から可愛い女の子だが俺の好きなタイプじゃない
うるさいのがたくさん出てきた。一応俺の煩悩は過剰反応。
そしてしばらくして一台のワゴン登場!
中には案の定、TOKIOの長瀬智也(22)が乗っていた。
そして彼は普通に車を降り、少し悪ぶってますよーといった姿勢と顔つきで
エレベーターに乗り込む。
追っかけの女の子は顔が引きつるほど嬉しそうな表情だ。
見られもしないのに懸命にスタジオ前で化粧までして幸せな脳みそだ。
しばらくしてスタッフも到着。
次々と機材を運び込むスタッフ。
機材運搬が終わったあたりで俺らも移動を開始することに。
スタジオ内でしばらく待つと最初に俺が呼ばれ行くことに。
何やら長瀬くんのまん前に立たされ案の定モデルガンを手渡される。
その距離は1メートルとない。
手を伸ばせばその大柄な22歳のタマキンをつかむことくらい
容易に出来てしまうかのような超至近距離である。
そしてADに台詞をしこまれる。
・・・・・・台詞?
ついに主役の前で一言発せられる時が来たのか?!
緊張で足は震える。
しかしその緊張をも振りほどくかのような俺の台詞、それは・・・
「ならおまえの命、もらいうける」
・・・・・・完璧に総会屋じゃないか。
台本というのは漫画と同じでよく変わるらしく俺からもう一人の
公園に一緒に行った人に変わったかと思ったら最後にはそこに来ていた
外国人エキストラ(黒くてでかくてすごい迫力)に変わっていって
その台詞も誰でもわかるような英語になった。
しかしさすが外国人である。
俺のような「素人がテレビに映れれば給料は少なくてもしょうがない」なんて思ってる
平和な日本国民の考えなど甘ちゃんの考えだと言っているかのようだ。
彼は芝居を要求されたことが少し不満げな様子だった。
その簡単な英語による会話を翻訳すると
外国人「俺はエキストラで来てるんだ。芝居をしに来たんじゃない。
もし芝居をするようであるのなら、それなりの報酬をもらわなければ気がすまない。」
すごく納得してしまったので思いっきり突っ込めないです。
確かにエキストラから役者になるわけだからそれなりの報酬の違いがあっても
おかしくないのだ。平和ボケな俺はこの時また1つ良いことを勉強した気がした。
そしてスタッフが監督と話をしてこの人に
スタッフ「How much?」
と、ごくごく簡単な英語で話しかける。
そして外国人の方は言う。
外国人「サンマンエン」
何故そこだけ日本語なんだ外国人。
何故3万円なんだ外国人。
まあきっとその人はプロでやっているのだろうとその後の色々で感じました。
そして撮影がスタート。
俺は結局長瀬くんをガンつけているだけでした。
ずっと高級そうで実は岩のように硬いイスに腰掛けながら
ただただ終了まで長瀬くんをガンつける。
ところで結局俺の役はというと悪役役役である。
悪役なら総会屋
悪役役ならこれも同じ総会屋
悪役役役だと総会屋役の役である。
つまりドラマの中のドラマみたいな感じだったのかな。
もう長くなってしまったので俺のスーツの股間から
白いものが見えていたのは置いといて、この辺にしておこう。
撮影が終了して外に出るとまだ追っかけの娘がいる。
数は4から6に増えていた。
まったくどこまで幸せな連中なんだ。
ああやって1日を費やすとはエキストラより大変だろうにね。
ご苦労様です。
自宅に帰宅。速攻で死ぬ。
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